雨の怪物

「ふ~ん。」


 彼女が話していたのは、どこにでもある怪談話。


 雨と雨の間には不思議な世界へ通じる道がある。


 そこに迷い込んだものは、そこから一生出られない。


 もし、運よく出られても、命は残っていない。


 ・・・とまぁ、そんな感じの話である。


 それを、『雨の中でも濡れていない死体』・・・というたとえ話を使って表現していたのだが・・・。


「ちょっと!もう少し、驚いたリアクションとりなさいよ!この話を始めて聞いたとき、悲鳴を上げた私が、馬鹿みたいじゃない!」


 手元にあるカップコーヒー片手に、亜矢さんが怒鳴る。


「いや・・・でも、そんな話を言ったら、世界中穴だらけだし・・・。」


 答えたのは、高校に入ってから出来た、友人。桜沢悠人。


 男にしては眺めの髪に、鋭い瞳。


 学園一の秀才と言う名にふさわしいインテリメガネをかけているが、本人曰く『伊達』らしい。


 なら、なぜそんなものをつけているのだ?・・・と聞いたところ『そっちの方が頭よく見えるだろう?』・・・とのコトだった。


 つまりは、そういうやつである。


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