君の瞳に映りたくて。
「………あれ、あの公園…」
5分程歩いた時、和泉が動きを止めた。
河川敷のすぐ下、道路の向こう側にある公園を見つめて動かない。
「見覚えあるの?」
「なんか…もやっとする。
あそこで何かあった気がする。」
「じゃあ行ってみよ。
香坂、和泉があの公園見覚えあるって。」
「あそこ?
でも前通ったときはなにも言わなかったじゃん。」
「そうなんだけど…なんかあそこ懐かしい気がするんだよな。」
「記憶が少し戻ったんじゃないの?
とにかく行ってみようよ!」
行ってみたらまたなにか思い出すかもだもん。
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「………で、なにか思い出したわけ?」
和泉は滑り台の上に座って、河川敷の方を眺めていた。
「…………なんも思い出せない。
でもなんか…なんか頭をよぎるんだよ。
なんだったかなー…」
「でもここ、懐かしいや。
昔ね、ここでよく遊んでたの、私。
近所の女の子と。
親同士も仲良くて、休みの日とかもよくここで一緒に遊んでたんだよね。
すっごい懐かしいや。」
アメリカに引っ越しちゃったから、その子がもうどうしてるのかわからないし、名前すら忘れちゃったけど
目がくりくりしてたことは覚えてる。
すっごい可愛かったんだよねぇ………
「舞桜って子供の頃どんなんだったの?」
「私はねー、子供の頃から走ることが大好きだったよ。
子供の頃ってさ、普通全速力で短距離を走るのが好きでしょ?
でも私は違くて、とにかく長く走ってるのが好きだったの。
だからよく遊んでた子とも、一緒にマラソン選手になろうねって言ってたくらい。
小さい頃なのに夢がマラソン選手なんて変な感じでしょ。」
「でも、じゃあなんで短距離にしたの?」
「んー、まぁそっちのが向いてたっていうか…ほんとは今でも長距離のが好きなんだけど大会に出て記録を残せるのは短距離だからかな。
私って昔から大会に出て記録残すことに力を注いできたから。」
「へぇ、そっか。
あ、だから毎朝長距離を走ってるのかー。」
「そ。もともと好きだから。」