君の瞳に映りたくて。



「知らねーってさ。」


いや、あの…香坂くん?
あの人たちにめーっちゃ見られてますけど…。

かと思ったら和泉がその席に向かって飛んでった。
…いったいなにをしてんだか…


「和泉までいっちゃったし…」


「春翔が?さっきんとこ?」


「うん。何してるんだろ。」


「じゃあちょうどいいから聞くけど、そのおしゃれは竹下意識?昨日会ったから。」


「あー、うん…まぁ…。
女子力が足りないな、と思いまして…」


「だからハンバーグやめたわけね。
最初メニューハンバーグ見てたくせに。」


「もー、わかってたなら言わないでよね!」


「はいはい。」


………この人ほんとにわかってんのかな。


「ちなみに宮下的にはどうなわけ?
春翔、戻れそう?」


「うん。戻る気がする。
和泉が気づいてるかはわかんないけど、少しずつ記憶取り戻してる。
私は和泉の事よく知らないんだけど、それでも前の…生き霊じゃない和泉に近づいてってる。確実に。」


「そうか。」


「きっとね、あと少しだよ。
そんな気がするの。」


ずっとこのままじゃないって、
ずっとこのままじゃだめなんだってわかってた。

…それでも近づいてくるその時がなんか寂しくて………
私だけの和泉じゃなくなっちゃうのがすごく寂しい。


「大丈夫だろ。
俺らはクラスメイトなんだし、春翔が戻っても。」


「………そうなんだけどね。」


それでもまた和泉の横は優衣ちゃんの指定席になる。
私が入る隙なんて、全くないんだもん。
………それでもよかったのに。
和泉が幸せならそれでよかったのに。

私はいつからこんなに欲張りになったんだ。



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