君の瞳に映りたくて。



「あの、さ…
昨日のはやっぱり夢だったのかな。」


はは、と空笑いしたけど、私は自分でもわかるくらい、全然笑えていなかった。


「ちょっと来て。」


今にも涙が溢れ出してきそうな私を、香坂は引っ張って校舎から連れ出した。




「………きたな。」


「文句を言うな。」


連れてこられたのはサッカー部部室。
きっと他に落ち着いて話せるところがなかったから。この学校に、屋上だの、空き教室だの、体育館裏だの、そういったところはないから。


「………話、なに?」


「あぁ…あのさ、宮下、俺に春翔の記憶がなくなってないか聞けって言ったろ?
あいつ、確かに怪我する前の事はちゃんと覚えてたんだよ。
………でも、なんで怪我をしたのかは全く覚えていない。
それに……意識を失ってた時のことも全くな。」


「えぇ!?」


「春翔が意識を取り戻す前、まだあいつが宮下のところにいたとき、思い出したって言ったんだよな?」


「う、うん…なんで怪我して、誰を恨んでるのかも思い出したって…それで、それが吹っ切れたから和泉は身体に引き戻されるって…」


「あいつはその全てを覚えていない。」


「どうして…」


「わからない。」


なんで……だってやっと両思いになれたと思ったのに…


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