君の瞳に映りたくて。
「………ちょっと聞いてみる。」
「誰に?」
「一昨日会った、霊感の強い人。
和泉の事が見えた人。」
私はそれだけ言って、長谷川くんに電話を掛けた。
きっと長谷川くんも学校だろうから、出てくれるかわからないけど、電話から鳴る呼び出し音を私はひたすら聞いていた。
『…もしもし?』
「あ、舞桜です!宮下舞桜!」
『あぁ、舞桜ちゃんか。誰かと思ったよ。』
「あの、ちょっと聞きたいことがあって…
今、平気?」
『うん、30分くらい平気だよ。』
「あのね、一昨日会ったときに私のそばにいた生き霊の男の子、覚えてる?」
『あぁ、うん。』
私は昨日のこと、今日のこと、香坂から聞いたことを、全て長谷川くんに伝えた。
「どうして覚えてないのかな…」
『それは、彼が生き霊だったから。』
「………どういう意味?」
『幽体離脱とかは魂が身体から抜ける状態なんだけど、生き霊って魂の一部って言うか、身体に残ってる魂と、生き霊として動いてる魂と2つあってね、生き霊が身体に戻ると、身体に残ってる魂の方が有利に働くから生き霊だった時のことを覚えてないんだ。
分かりやすくいえば、幽体離脱は身体も魂も同一人物。
だけど生き霊の場合、別人物になるんだよね。
そもそも、生き霊飛ばしてる自覚ない人のが大半らしいしね。
だから、自分の意識とは裏腹に、もう一人の自分がいるってこと。』
「………じゃあ記憶が戻ることは…」
『正直、厳しいんじゃないかな。
今はもう混ざっちゃってるからさ』
「そんな…」
「………でもさ、そういう心の感情の変化はきっといつか気づいてくれるよ。
頑張って。」
「ありがと…
あ、じゃあ切るね。忙しいのにごめんね。」
『全然いいよ。またね』