君の瞳に映りたくて。



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「片付けが終わったら各自速やかに帰れよー。」


結局リレーは接戦の末、6組が勝利した。
私に渡った時点で4位とトップとはけっこう離れていたけれど、そんな状況の方が走る価値があるってもの。

陸上部エースの本気を見せつけてやった気がした。
あんなに離れてたのに2位まで登って、私の次の走者、和泉はいつもよりもずっとずっと速かった。

3年があんなに遅くなければ、きっと圧勝だった。
…ま、接戦だったからこそ盛り上がったというものだけど、はっきり言って6組としてはかなりヒヤヒヤだった。


無事優勝できたから結果オーライなんだけど。


「舞桜~、帰ろ!」


「うん!」


片付けも終わり、やっと私たちも帰路につける。
まだ体操着のままだけど、準備もしたし1日が長かった。


「あー、宮下待て!!」


………今度はなんだ。


「なにー?先生。
帰るんだから手短にね。」


「宮下は次からリレーも走ろう!
今日のタイム15秒だぞ!リレーなのに!バトンもスムーズだったしな。」


「えー。リレー?
私個人競技が好きなんだけど。」


「いいじゃないか!
宮下が入れば全国も夢じゃないし。」


「お断りします。
そういうその場だけの勝利には興味ない。
リレーに入れられなら短距離の練習時間削られるし。
私は、好きなことをやってたいの。

そんなこというなら、リレー選手を鍛えればいいじゃん。
顧問の金城先生?」


「いや、そうなんだけどさー…」


「走れば速くなる。
速くなれば勝てる。
勝てば、強くなる。

たったそれだけのことでしょ。」


もともと長距離選手だった私に、金城先生がそう言ったんだ。
忘れたとは言わせない。



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