君の瞳に映りたくて。
えーと、えーと、
「………あ、ここです。」
「…このアパート?」
「うん!そう!!」
「ふーん。近いじゃん。
中入りなよ。」
「あー、うん。
でもここで和泉を見送ってから…」
「いや、俺が送ってきてるんだけど。
宮下が入ったら俺も帰るから。近いし。」
いや、でもねぇ…
ここじゃないし、家。
「………部屋どこ。」
「え。」
「もしかしてー、家ここじゃない、とか?」
う………
「…友達に嘘ついていいのかなー?」
「………ごめん。
だってうち、すごいボロボロだから」
「別に気にしないよ?」
「どんな家でも?
どんなに遠くても?」
「当たり前じゃん。」
「………じゃあ他の人には内緒にしてよね。」
「うん。
………祥也も知らねーの?」
「知らない。美乃里だって知らない。
誰も知らない。」
「…そんなに教えたくないの?」
「昔、それで嫌な思いしたことあるから。
行こ。」
仕方ないから、私は自分の家に向かって歩き始めた。
別に和泉ならいいや。
っていうか、本当はもう和泉は知ってるから。