君の瞳に映りたくて。



「………ここ、です。」


「ここ?…って、俺んちの前だけど。」


「や、そっちじゃなくて
………こっちです。」


「ここ!?」


「………うん。」


「…どこがボロボロなんだよ。
豪邸じゃん。

そっかー、ここ宮下んちだったんだ。
そういやここ、宮下さんちだもんなー。

中学どこ行ってた?やっぱ私立?同じ中学じゃないもんな。」


「あー、遠いとこ。
名前いってもわかんないと思うから。」


「そっか。
今度は中入るんだよな?」


「うん。ここは本当にうちだから。
送ってくれてありがと。
本当は一人で帰るの怖かったの。」


「あんなことがあったんだからしかたねーよ。
…なぁ、俺にも連絡先教えてよ。」


「あぁ、うん。いいよ。」


和泉の番号、か………
ふふ、嬉しいや。


「ありがと!」


「いや、俺のセリフだけどね?それ。」


「はは、そっか。
じゃあ私中入るね。送ってくれてありがと。」


「どういたしまして。
じゃあ、また明日。」


「え?明日?」


「部活でしょ?」


「あ、うん。そっか。
………優衣ちゃんもいるけど平気?」


「全然平気。俺が避ける理由なんてないし。
まぁ正直みたくもないとこなんだけど、逃げてるわけにもいかないしね。」


「そっか。
ま、香坂もいるしね。」


「宮下もね。」


「はは、そっか。」


「じゃあ、中入りなよ。」


「うん。
じゃあね。」


私はやっと門の鍵を開けて、中へと入った。
玄関のドアを閉める前に、手も振って。



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