君の瞳に映りたくて。
それから30分、私たちは話すこともなくお互い黙々と自主練に励んだ。
決して邪魔はしない。
目標は違っても、頑張りたい気持ちは一緒だから。
「宮下。」
「ん?」
「そろそろ他のやつらも来るし、先に走っとこうと思うんだけど一緒に走んね?」
「うん、いいよ。距離は?」
「グラウンド10周の2キロ。
どっちが速いか勝負な。」
「オッケー。負けないからね。」
「女に負けたら俺めっちゃ情けねー。」
「私も速いからね。
じゃあ行くよー?
よーい、ドンッ」
和泉と走るのは好き。
ペースも、和泉の隣にいるのも心地よくて。
昔、長距離が大好きだった頃の気持ちが蘇る。
今も好きだけど……昔はもっと好きだった。
なんでそんな好きだったのかはわからないけど、和泉がいるだけで昔の気持ちを思い出せる。
私は長距離が走りたくて陸上を始めたんだって。
この不思議な感情はいったいなんなんだろう。