君の瞳に映りたくて。



それから30分、私たちは話すこともなくお互い黙々と自主練に励んだ。

決して邪魔はしない。
目標は違っても、頑張りたい気持ちは一緒だから。


「宮下。」


「ん?」


「そろそろ他のやつらも来るし、先に走っとこうと思うんだけど一緒に走んね?」


「うん、いいよ。距離は?」


「グラウンド10周の2キロ。
どっちが速いか勝負な。」


「オッケー。負けないからね。」


「女に負けたら俺めっちゃ情けねー。」


「私も速いからね。
じゃあ行くよー?

よーい、ドンッ」


和泉と走るのは好き。
ペースも、和泉の隣にいるのも心地よくて。

昔、長距離が大好きだった頃の気持ちが蘇る。
今も好きだけど……昔はもっと好きだった。
なんでそんな好きだったのかはわからないけど、和泉がいるだけで昔の気持ちを思い出せる。

私は長距離が走りたくて陸上を始めたんだって。

この不思議な感情はいったいなんなんだろう。



< 238 / 500 >

この作品をシェア

pagetop