君の瞳に映りたくて。
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………やっぱり和泉についていくのはきつい。速い。
他の男子なら私のが速いけど、和泉はそう簡単にはいかない。
「次、がラストな」
そうやって余裕そうにいってくるのもまた悔しい。
私はこんな必死についていってるのに。
「じゃあお先。」
そうやって余裕の笑みを浮かべて先にいってしまうから、私も最後の力を振り絞って一気にペースをあげた。
ただついていってるだけで、どうしても抜かせない。
悔しい、悔しい、悔しい。
「ふぅー、疲れたー!」
結局、一回も抜かせずに私たちはゴールした。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
私には喋る余裕すらないのに。
「もう…だめ…」
私は、グラウンドにあるステージへ倒れこんだ。
もう立ってるのも辛いから。
「はぁー、やっぱ宮下は速いなー。
つーか根性がスゲーな。もっと差をつけてゴールする予定だったのに。」
そういって和泉も私の横へ倒れた。
「だって、悔しいじゃん。
結局和泉には敵わなかったな。」
「だって俺、サッカー部のエースだし?」
「私は陸上部のエースだもん。」
「俺は男。」
「…関係ないし。
私は誰にも負けたくない。」
「はは、負けず嫌いだなー。」
「当たり前。じゃなきゃ強くなんかなれないもん。」
「………空、綺麗だな。」
「そうだね。」
今日は決していい天気じゃない。
昨日の雨が残ったような、どんより雲。
夕方はまた雨予報だしね。
それでも走り終わって見上げた空は綺麗だった。
「………あれ、宮下ってピアス開けてる?」
「ああぁぁぁ!耳だめ!触んないで!
くすぐったいから。」
「………へぇ…」
………あ、なんか悪い顔してるよ、この人。
「なんで耳塞いでんの。」
「和泉がいかにもくすぐってやろうって顔してるから。」
「うわ!まじか!
くっそー。」
「やっぱりその気でいたんじゃん!」
「面白そう。」
「くすぐったらやり返すからね。」
「俺はそういうの強いから。」
「うわー、また負けた。」