君の瞳に映りたくて。
「怖いなら、SPを付けるわ。
ね、舞桜。」
「………友達と離れたくないの。」
「…どうせ、今だけの付き合いになる。
好きな人だって、どうせ今だけだろ。」
「そんなことない!」
「じゃあその男は舞桜の全てを受け入れて、会社を継ぐ決心がもうできてるって言うのか?」
「それは…」
「ならそんな男はやめて、一緒にアメリカに戻ろう。」
「………お父さんには将来の夢ってなかったの?」
「俺が舞桜くらいの時にはもう起業することを考えていたよ。」
「へー、じゃあ夢が叶ってよかったね。」
「…舞桜。」
「お父さんはさ、将生の将来の夢、知らないでしょ。」
「将生の夢?あいつはずっとお父さんと一緒に仕事をするって言ってたぞ」
「そんなの、お父さんの喜ぶ顔が見たかっただけ。
そのためだけについてた嘘だよ。
将生、本当は料理人になりたかったんだよ。
いつか美味しいご飯を食べさせてくれるって、将生は小さい頃から言ってた。
お母さんの作ったご飯が好きで、お母さんの作ったご飯を食べるお父さんが好きで、目標はお母さんだって。
そんな将生の夢を潰したのはお父さんだよ…
本当は野球だって大好きだったのに、お父さんが勉強のことばっかり言うから、野球だって我慢して勉強してたんじゃない。
私だって、親が決めたレールの上なんか走りたくない。
私にだって将来の夢くらいあるんだからね!
好きな人と恋愛だってしたいし、陸上だって続けたい。
だけど、いつだってお父さんに邪魔される。
もうそんな人生嫌なの。」
「…だけど、恋愛結婚は認めてる。陸上だって…」
「恋愛結婚認めてるとかいいながら、会社を継ぐ覚悟がある人って条件つけてるじゃない。
陸上だって、制限つけまくってさ。
私はずっと走り続けたい。上を目指したい!
…私の好きな人だって将来の夢くらいあるんだよ。
それなのに、お父さんがそんな条件つけてるせいで、私は諦めるしかないじゃない。
お父さんはいいよね。
好きな人と弊害なく結婚して、好きなことして、将来の夢も叶えて。
私なんか、夢も好きな人も諦めて、お父さんの言いなりにしかなれないんだよ。
少しは私の気持ちも考えてよ!」
「舞桜!」
「…少しは、私のこともちゃんと見てよ。」
話にならなかった。
だから私は逃げることしか選択することができなくて、部屋に閉じ籠ることにしたんだ。