君の瞳に映りたくて。



私はホテルの窓から見られないように、木に隠れながら、フードもかぶって少し辺りを歩いた。

それでも見つからなくて、和泉にLINEすると


"ずっとまっすぐ歩いてきて"


とのことなので、木に隠れながらひたすら奥に進んでいった。

真っ暗だから、ちょっと怖さもあるけど………
あと少しで和泉に会えると思えば頑張れる。



………あれ?あれ、かな?
和泉だよね?


芝生に座って空を見上げる男子。

あれは、間違いない。和泉だ。
よかったー。


「いず…」


………あれ?

私より前に、和泉に近づく女の子が一人。



その女の子の足音に気づき、和泉が後ろを見るも


「春翔…」


「………なんだ、優衣かよ。」


和泉は表情を変えてまた前を向いた。


私は二人から5メートルほど後ろの木の陰にいて、はっきりいってすぐそこにいるから私のことは見えてないんだな、と思うしかなかった。


「あの…春翔に話があるの」


「………俺はお前の話なんか聞く気にもならないから。」


和泉はそういって立ち上がり、こちらに向かって歩き出して、そこでやっと私の存在に気がついた。


「なにやってんの。
あっち行こ。」


「え、でも…」


「いいから。」


………でも、優衣ちゃんはすごく真剣な顔をしてるし、和泉だって、決していいとは思っていない顔をしてる。


このままで、いいのかな…




< 293 / 500 >

この作品をシェア

pagetop