君の瞳に映りたくて。



声が震える。
だけど、私の声は確かに伝わったはず…
和泉に、ちゃんと届いたはず………


「あ、あの…」


「ごめん」


………え?


「ごめん。俺…宮下のこと…」


「…あぁ!うん、わかったから。
私こそ急にごめんね。
そうだよね。っていうかわかってたし。
和泉の笑顔が、優衣ちゃんの時とは違ってたし。
前から私のことなんか見てなかったもんね。」


「え、ちが…」


「和泉の気持ち聞けただけで十分なので…
あ、じゃあ寒いし先に戻ります。
じゃーね。」


「宮下!」


私は流れてきそうな涙を隠すためにいっぱい喋って、その場に立ち上がった。
もう、和泉の横にはいられないから。

………だけど、そんな私の腕を和泉が掴んだんだ。


「…離して?」


もう顔は見れない。
下を向いて、顔を隠すことしかできない。


「でも…」


「離してってば。」


歯切れの悪い和泉にイライラする。
もう、私のことなんか放っておいてほしい。

そんな優しさはいらない。


「……和泉さ、好きでもない人にかわいいって言ったり、飲み物奪って飲んだり、ボディタッチしたりするの、やめた方がいいよ。
好きでもないのに期待持たせるようなことしないで。」


私はそれだけいって、腕を振り払って歩き出した。

ただの八つ当たり。
和泉の好きな人が私じゃなかったなんて、和泉のせいじゃないのに八つ当たりなんてして最低。

でも、感情のコントロールなんてできない。


……優衣ちゃんとは好きでもないのに付き合い出したくせに。
やっぱり見た目なんじゃん。
優衣ちゃんは良くて私はだめなんだね。


「…った、…香坂…」


「おう、ちょっと付き合えよ。」


「え、ちょっ…!」


こいつ…話聞いてたな!!
あんな近くに待ち伏せして!!盗み聞きか!



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