君の瞳に映りたくて。
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ドンドンドンドンドンドン!!
……ドンドンドンドンドンドン!!
「なんだよ、鍵持ってかなかったのかよ。
……宮下じゃん。どうした?」
「お邪魔します。」
私は結局部屋に戻れなくて
……美乃里には愚痴をこぼせなくて、香坂の部屋に押し掛けた。
「え、おい。
女が男の部屋に来るのは禁止だろ。」
「ホテルを抜け出すのもね。」
「ってか春翔は?一緒だったんだろ?」
「……はい。」
私は香坂に、和泉からきたLINEメッセージを見せた。
「なにこれ。
あいつめっちゃ急いで出ていったけど。」
「外で優衣ちゃんと会ってた。
素直に言えばいいのにさ。なんでそんな嘘つくのかな。」
「誤解されたくないとか?」
「……和泉はさ、私にずっと好きでいてほしいんじゃない?
今日も散々期待持たせるようなこと言ってたし。
……モテていたいんじゃないの?知らないけど」
「そんな自虐的になんなよ。
ってかそんな怒んなよ。」
「私、嘘つかれるのすっごい嫌なの。
しかもあえて私を期待させるような言い方してさ。
こんなの、騙そうとしてるからできるんだよ。
騙そうとしてなかったらこんなLINE送らないだろうしさ。
結局弄ばれてたってことでしょ。
こっちは超真剣に好きになって、超真剣に告白したのにさ。
あんな簡単に、気持ちもこもってない告白受けちゃってさ。
それでまた信じるんだって。
また、優衣ちゃんのこと信じるんだって。
バッカみたい。
…なんかもう、どうでもよくなった。」
「お前も嘘ついてんなよ。
…どうでもよくないから、そんなムカついてんだろ?
どうでもよくないから、そんな嫉妬してるんだろ?
泣きたいなら泣きゃいいのに。」
そういって、ソファに座った私の頭に、香坂は手を乗せた。
さっき、和泉とは言ってたことが真逆で、香坂らしくない優しさが今は心に沁みた。
和泉が優衣ちゃんといたこととか、和解したこととかに嫉妬してるんじゃない。
和泉が嘘ついたことが悲して、和泉の言動が信じられなくなってるのがまた悲しくて…
私は何年ぶりかに涙を流した。
嘘がこんなにも悲しいだなんて、改めて思い知った。