君の瞳に映りたくて。
「……お前も頑張ってんのにな。」
「ほんとだよ。
夏休み、最後の一週間潰してまで和泉のために動いてたのにさ。
"舞桜、ありがと"だけだもん。」
「あいつ、舞桜って呼んでたのかよ。」
「うん。
なんて呼んでたか聞かれたけど話したことないからって言ったら自分でそう決めて呼んでたよ。
あの一週間でいろんなこと話したのになんにも覚えてなくてさ。
結局記憶だって自分で思い出したし、私の一週間はなんだったんだろうって。」
「……でも、春翔がいたから俺と仲良くなったんだろ?
無駄みたいな言い方すんなよ。」
「あぁ、うん。
ふふ、そうだね。香坂とはあんなことがなければ絶対仲良くなってなかったもん。怖かったし。
……香坂はずっと一緒にいてくれてありがと。
私香坂がいなかったら愚痴れる人もいなかった。
香坂がいてよかったよ。
ほんと、ありがと。」
私はそういってバルコニーに出た。
私たちの部屋はテラスなのに、2階低いだけでバルコニーって、その差はなんなんだろう。
「…あ。」
嫌なものを見てしまった。
嫌なものを見た私はその場にしゃがみこんで、ため息をつくしかなかった。
「どうした?」
そんな私を見た香坂もバルコニーに出てきて外を見て、きっと私と同じものを見た。
「……本当に仲直りしたんだな。」
「もう、付き合ってた頃の二人だよ。」
庭にはぴったりくっついて、じゃれあいながらホテルに向かって歩いてくる和泉と優衣ちゃん。
もう見ることないと思っていた二人が仲睦まじく歩いてる。
「……私もいい加減、前進まないとな…」
「春翔やめんの?」
「まぁ簡単には無理かもだから、別に好きな人作るとか?
わかんないけど、今のまま大人しく和泉のこと好きなのがなんか嫌なの。
なんか、和泉に弄ばれてる感じして。被害妄想かもだけど。」
私も前に進みたい。
和泉を好きになってから初めて思った。
和泉の幸せなんか願っていない自分になっていて、私は嫌な女になってしまった。
だから、また和泉の幸せを願える女になりたい。
こんな自分は嫌なんだ。