君の瞳に映りたくて。



近づいてくる和泉にオロオロしていると、今度は私の口が手で塞がれた。


「こいつは俺のだから。」


「………祥也…いたのかよ。」


後ろから聞こえてくるのは香坂の声。
和泉に掴まれた腕と、恐らく香坂のであろう手が口を塞いでるせいで、振り替えることはできないけど。


「お前は友達の彼女にまで手を出すようなやつになったのか?」


「………祥也が言えたことかよ。」


…それはどういう意味?
香坂って和泉の彼女に手出したことあるの?

………まさかねぇ…。
和泉の彼女は優衣ちゃんだけだったはずだし。
香坂ってちょっと優衣ちゃんのこと嫌ってるし。


「とにかく、行くぞ?
もうみんな出発してる。」


やっと私の口から手が離れ、今度はその手が私の左手をつかんだ。


「あ、うん。」


私は香坂に引っ張られるまま、和泉の横から離れてドアに歩き出した。

そしてドアのところで入れ違いに…


「春翔~!」


そう叫ぶ優衣ちゃんとすれ違った。

そんな光景が、また懐かしくて……私の胸はまた強く締め付けられた。


「………あの二人って、どうなったの?」


「気になんの?」


「え、まぁ…」


「なんで?」


「…別に理由なんてないけど…」


「………より戻ったんじゃね?」


「えっ…。」


「…でも、そんなこと関係ないだろ?
お前は俺の彼女なんだから。」


そういう香坂の目はいつもより鋭くて、怖かった。
仲良くなる前の香坂に戻ったようで………


「…悪い。」


「え?」


「これじゃただの八つ当たりだな。」


………八つ当たり…?


「……………もしかして、嫉妬した?」


「別にしてねーよ。」


「うそ!絶対そうだ!」


「うるせーよ。静かに歩け。」


「へぇ、香坂でも嫉妬とかするんだねぇ。」


「………悪いかよ。
彼女が他の男、しかもお前の好きな相手にキスされようとしてたんだぞ。
普通するだろ。」


うわー、香坂が嫉妬!
まじでか!

似合わないけど嬉しいや。



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