君の瞳に映りたくて。



「悪い、待たせたな。」


宮下と榑林のところに戻って祥也が声をかけると、宮下は背中を向けたまま、振り返ることもしなかった。


「宮下。」


そんな宮下の隣には祥也が行ってて…本当に自分が情けなくなる。
言いたいことも言えず、言いたくないことは口からこぼれて…
そうこうしてるうちに俺の好きな人は俺の友達の横で笑ってて…


俺、なにやってんだろ。


「和泉、どうしたの?」


自動的に俺のとなりには榑林が来る。


「英語ばっか聞いて頭おかしくなったのかも。」


「友達になってと懇願してた和泉が、突然嫌うわけないのにね。
舞桜ってそういうとこ素直だから。」


「いや…あのさ、車の中で話してたじゃん。
宮下、いじめられてたって。
だから余計に心配になったんじゃねーかなって。
俺、それをさっき思い出して…最低なことしたよな。
宮下に思い出させたかもって。」


本当に、過去の傷を痛めてしまった俺は最低だよな………


「バカじゃないの?」


「は?」


「言っとくけど、舞桜は和泉のことを友達だと思ったことは一度もないし、和泉に嫌われたくらいじゃ舞桜はくじけない。
…あの子には友達がたくさんいるから。
今は香坂もね。
だから和泉もそんな落ち込まないの。」


「………それはそれで腹立つ。」


「でもあの二人、いつの間にあんなに仲良くなったんだろ。」


「ほんとだよ。
夏休み、俺が怪我する前までは仲良くなかったはずなのに、俺が入院中には一緒に見舞いにきたみたいだし。」


「そうなの?
……舞桜も最近、香坂には話してるみたいだけど私には隠し事してる気がするし…
ほんと、香坂には妬ける。」


「ほんとだよ。」


「え?
………え、和泉って舞桜のこと…」


あ、やべ…口滑った…


「えぇ!?うそ、ほんとに!?」


「バカ!声でけーよ!」


「ご、ごめん…。でもじゃあなんで…」


「宮下を振ったあとで気づいた。
そっからは全部すれ違って…」


「………バカじゃないの?」


「うるせーよ!」


バカだなんてわかってるっつーの。
でも、バカはバカなりに応援するしかねーんだよ。こうなったら。


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