君の瞳に映りたくて。



「それと、さ……
アメリカに戻ること、和泉には言わなくていいの?」


「え、言わなくていいよ、全然。
修学旅行終えてから一言も話してないんだよ?
向こうも別に興味ないと思う。」


むしろ話しかけんな、とか思われそうで、怖い。
きっと和泉は私の走ってる姿が好きなだけで、私のことは嫌いだと思うから。


「……本当にいいの?」


「いいの。」


私は着替えを終えて、ロッカーをバタン、と閉めた。


「じゃ、お先に。
祥也が待ってるしね。
お疲れ~。」


マフラーまでしっかりして、私は部室を出た。
今はもう暗くなるのも早くて、寒いし。


駐輪場へ向かえば、祥也が壁に寄りかかりながら立ってて、その姿は何度見てもかっこいい。

こんなかっこいい人が私の彼氏だよ。
びっくりだよ、全く。


「祥也。お待たせ。」


「おう、帰るか。」


祥也は自転車なのに、毎日徒歩の私のために自転車を押して帰ってくれる。

手が絶対寒いのにね。


「陸部は明日からは休みだけど、サッカー部は?まだ?」


「サッカー部は明日はまだある。
土日は休みになった。」


「へぇ、そっか。」


じゃあ明日、買いに行くチャンス、かな?
一緒に帰れないだろうし。


「土日はどうする?一緒に勉強するか?」


「んー、そうだね。
ファミレスとか行く?うち来る?」


「んじゃファミレス。」


「はーい。」


祥也には家はもう教えた。
隠す必要はないと思ったから。

……だけど、家の那珂には入ってこない。
彼なりのけじめ?なのかな。


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