君の瞳に映りたくて。



仲良く歩いて数分、私の家の前についた。


「今日もありがとね、わざわざ。
あそこまででいいのに。」


「また襲われたらどうすんだよ。
つーかさ、なんで今まで家を内緒にしてたわけ?」


「…家がお金持ちだからっていいことばかりじゃないの。」


「たとえば?」


「……アメリカにいてね、人種差別されてひどいいじめにあって、人間関係が面倒になって。
中学に上がると友達が出来たの。
それなのにその子達もみーんなお金目当て。
いつも私がお金を出してた。

リアんだってそう。リアンが婚約者になったのだって、リアンの家がお金持ちだから。
たったそれだけのことで、親が勝手に決めるの。

貧乏だったら、アメリカに行くことだってなかった。
……弟が死ぬこともなかった。

こんな広い家じゃなくて、もっと狭い家でいいから、家族全員で過ごせるような、そんな普通の家庭に憧れるの。」


「……なるほどな。」


「祥也んちも似たようなとこあるでしょ。
家柄重視って言うか。」


「そうだな。
だから気持ちは少しわかるかも。」


「そういうのくだらないよね。
こっちの気持ちくらい、少しは考えてよって……」


親と、お金に振り回されるのはもう疲れたよ。


「…ま、今くらい忘れろよ。」


「……そうだね。ごめんね、こんな話。」


「いや。」


祥也はそう言って私の頭を撫で、そのまま私を引き寄せ、またキスをしようとする。
……の、だけれど…


「家の前でそういうことするのはどうかと思うけど。」


また、いつものように声がかかった。


「…また春翔かよ。
待ち伏せでもしてんのかよ。」


「人聞き悪いっつーの。
俺も今帰ってきたんだわ。」


「へー、ずいぶんおせーな。」


「……優衣送ってきたんだよ。」


ふーん…やっぱり戻ったのかな。
ま、彼氏のいる私には関係ないかな……


「……祥也、私中入るね。」


「あ、あぁ。そうだな。
じゃあまた明日な。」


「うん。またね。」


なんとなく、和泉が近くにいるのが嫌で、私は祥也から離れて家の中へ入った。



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