君の瞳に映りたくて。



「約束の日が来れば笑顔でバイバイ?
そんなのふざけてる。
そんなの、本気であなたを想ってる祥也がかわいそすぎる。」


「だけど、私は…」


「アメリカに帰るから?
なら最初から付き合わなければよかったんじゃないの?
そういう中途半端さが、人を一番傷つけるの!」


英梨さんは目を潤ませながら強く言った。


「……もしかして、英梨さんは祥也のこと…」


「…私は、ずっと祥也だけを見てきた。
5歳の時に引っ越してきた私に、一番最初に声をかけてくれたのが祥也だった。
祥也と仲良くなってから、私の周りには友達が増えていった。もちろん、春翔も。
だけど私はずっと祥也だけを見てきた。祥也だけをずっと好きでいた。
祥也のお母さんは家柄をすごく気にする人で、うちは本当は裕福な家庭じゃないけど、それでも弁護士として頑張ってる私のお父さんのことは認めてた。
それを支え続けてきたお母さんのことも認めてた。
…私にも、お金だけがすべてじゃないって教えてくれた。
だから私は必死に努力した。
祥也に釣り合うように、祥也のお母さんに認めてもらうために、勉強も、見た目も、仕草も。

だけど中学の時、祥也に彼女ができて…すごくショックだったけど、お互いが本当に想い合ってたから祥也が幸せならそれでいいって思ってた。
祥也のために頑張って自分磨きしてきたけど、無駄にはならないから。
結局二人は別れたけど…
本当は高校も一緒がよかったけど、私は親の希望した英明女子に入った。合格したとき、私の両親も、祥也のお母さんもすごく祝福してくれた。
やっと告白できるかもって思ってたのに、祥也にはまた彼女が出来てて…
お互いが本当に想い合ってるならそれでいいと思った。

だけど話を聞いてみればあなたは春翔と祥也の間でふらふらしてる。
それが一番許せないの!」


強くそういった英梨さんが怖くて、祥也への想いが伝わってきて、私はなにも言い返せなかった。


「私は祥也に好かれるため、祥也のお母さんに認めてもらうために必死に努力してきた。
だからあなたみたいに適当な気持ちで祥也の彼女を名乗ってるのが許せないの!

……きっと、あなたもすごく一途なんだと思う。
春翔のためにいろんな努力をしたって祥也言ってたから。
そういうところはすごく素敵だと思う。
陸上を頑張ってるとか、親のためにアメリカに戻るとか、そういうところは本当に好感が持てるの。
祥也があなたに惹かれたのだって、理解はできる。

…だから、余計にあなたが適当な気持ちで祥也と付き合ってるのが許せない。
あなたみたいな人が、中途半端な気持ちで祥也のことを傷つけないで。
お願い。」


英梨さんの話を聞いていて、すごく自分が嫌になった。
恥ずかしくなった。

私が英梨さんの目を見て話せないのは英梨さんが人並外れた美人だからじゃない。
どこまでも、まっすぐと自分の気持ちと向き合ってるからだって、気づいてしまったから。
私が自分に素直になれていないと気づかされてしまったから。


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