君の瞳に映りたくて。
それから、私は先生に何回もタイムをとられ、何本も何本も走った。
やっぱり調子の良い私はタイムも機嫌も良くて、先生もご満悦だった。
「お疲れさまでした~。」
そして、私は珍しく誰よりも早く練習を終え、着替えをし、部室を出た。
これから祥也と会うのに、先生の話も聞かなきゃいけないから。
「失礼しまーす!」
「おう、宮下。」
「あ、先生~。なに?呼び出して。」
「とりあえず向こう行こう。
進路指導室な。」
「進路指導室?」
なんだそれ、どこにあるんだ?
っていうかここでもいいんだけどな、私は。
「あー、そこそこ。」
「あ、はい。」
進路指導室は、職員室の隣の隣にあった。
なんだか辛気臭い部屋……
「で、話ってなに?もしかして告白ー?」
「そうなんだよ。
俺ずっと宮下のことが好きで……って、んなわけあるか!」
「そっか、よかったよかった。
で、なに?手短にね。」
「……3月に、陸上国際大会があるのは知ってるよな?」
「あぁ、うん。それが?」
「その強化選手に、宮下が選ばれたんだ。」
「……え?」
「来月、年が明けたら強化合宿がある。
そこで勝ち抜いた者が日本代表として出場する。
有名選手も多く参加する。
宮下なら、きっとそこで切磋琢磨してタイムを伸ばせると思うんだ。」
「……でも、私はアメリカに行くから…」
「本当にいいのか?
3年に1度しかない、陸上では最高峰の世界大会なんだ。
次、声がかかるかなんてわからないんだぞ?
……少し、考えてみてくれよ。
今から鍛えれば、この先世界的な大会で通用するタイムが、宮下には出せるはずだ。
俺の指導で11.5まで来たんだ。必ず宮下なら伸びる。
返事はギリギリまで待つから。」
「……わかりました。」
私は頭を下げて、進路指導室を出た。
なんだか、現実的ではない話で…一回頭を冷やしたかった。