君の瞳に映りたくて。
「あのね、私春翔と走ってるときが一番楽しいの。
やっぱり私もどこかで覚えてたのかな。
春翔と小さい頃一緒に走り回ってたこと。」
「……俺もさ、他の誰よりも舞桜に負けたくないんだよね。
女の子相手になに考えてんだかって感じなんだけど、あんなに差もなくゴールされるとすげー悔しいんだよね。」
「なにそれ。
じゃあいつか春翔抜かすね。」
「は?ぜってームリだし!」
「………ずっと走ってられたらいいのに。」
それが、私の小さい頃の夢なのにな。
「ずっと走ってたらさすがに疲れると思うけど。」
………そういう意味じゃないし。
バカなの?この人。
「そうだね。」
ま、話は合わせておこう。うん。
「あ、そうだ。
ねぇ、小さい頃の写真一枚ちょうだい。」
「え?いいけど、舞桜は持ってねーの?」
「私の部屋にはないね、少なくとも。
アメリカの家の私の部屋にもないし、お父さんの書斎は入ったことないけど他でもアルバムって見たことない。
私が飾る人だから。
あれじゃない?春翔んちお母さんだけ撮ってた、みたいな。」
「ふーん?まぁいいけど。
どれがいい?」
「実は前見たとき気に入ったのがあったんだ~。」
春翔が取ってくれたアルバムを広げて、私はお気に入りの写真を探した。
「あ、これこれ。
これがいい。」
「えー、それ俺もお気に入り。」
「えー、ダメ?」
「んー、じゃあそれを写メとる。
で、これを舞桜の部屋に飾ってくれるならいいよ。」
「もともとその予定だもん。」
私が選んだ写真は一緒に河川敷を走ってる写真。
顔がアップなわけじゃないけど、大きな川と大きな夕陽と、小さな私たちが走ってる姿がすごく好きだから。
「ん、どうぞ。」
「ありがと!
じゃあ写真たて買いに行っていい?」
「うん。
じゃあ行くか。そろそろ。」
「うん!」