君の瞳に映りたくて。



私たちはそれから出掛けて、とりあえずお目当ての写真立てを買い、それからは駅周辺をフラフラした。

途中ペアのネックレスなんかを見つけてしまったけど、私は買うことができず、春翔を誤魔化してお店を出た。


思い出があると辛くなる気がして…


そして楽しい時間はあっという間に終わる。


「送ってくれてありがとね?」


「まぁ俺んちあそこだしな。」


「はは、そうなんだけどさ」


「………どうした?なんか暗いじゃん。」


「んー、だって今日終わっちゃうから。
楽しかったから寂しい。」


「なら泊まってけばいいのに。」


「だめ。悪いもん。
………ねぇ?春翔」


「ん?」


「春翔は春翔のまま、夢を追いかけてね。」


「はぁ?なにその遺言みたいなの」


春翔はそういって笑ったから


「え!いいじゃん!」


私も笑い返した。
なにも言えない私は、春翔に抱きついて寂しさを隠すことしかできなかった。


「暖かいなー、舞桜は。」


「春翔もね。」


この暖かさが安心する。
温室育ちの私はここから離れられなくて、そのまま時間だけが過ぎていく。


「………舞桜?どうした?」


「んー、なんでもないよ。
くっついていたかっただけ。ごめんね。

寒いしそろそろ入るね。」


「その前に。」


春翔は家の前なのに、私に優しいキスをした。


「じゃ、また明日な。」


「………バイバイ。」


私は笑顔で春翔から離れて、門を開けた。
振り向くことなく、玄関まで行って、中に入って涙が流れた。


「………ごめんね…」



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