君の瞳に映りたくて。
ごめんね、ありがとう。
***
「あ、ちょっと待って!
まだ時間あるよね!?
そこのカレーパン買ってっていい?」
「もう、仕方ないわね。」
「いいよ。まだ時間はあるから。」
「ありがと!ちょっと待っててね!」
大好きなカレーパン。
美乃里とも、祥也とも、そして春翔とも1回は一緒に食べた思い出のパン。
「すみませーん、3つください!」
そして、小さい頃よくお父さんとお母さんとも食べたカレーパン。
記憶力の悪い私でも忘れなかった思い出だ。
「はい、二人の分!」
「ありがと。」
私たちは三人仲良く行儀悪くカレーパンを食べながら駅まで向かった。
「ん~、ここのカレーパンは昔と変わらないわね。」
「本当だな。懐かしいな。」
「実はね、お父さんとお母さんはあそこのカレーパンで出会ったんだよ。」
「え、そうなの?詳しく聞きたいんだけど!」
「あそこ、この時間だとほとんど売り切れてるだろ?
昔はもっと少なくて、学校帰りに買おうと行ったら最後の一個だったんだよ。
買えると思ったのに母さんが俺が買おうとしたの奪ったんだよ。」
「あれは、私の方が早かったんです!」
「…って感じでケンカになって、なんやかんやで付き合って結婚したんだよ。」
「へぇ…意外とロマンチックな恋愛してんじゃん。」
「舞桜は?彼氏とかできなかったのか?」
「私はいいの。」
お父さんの期待に応えられる人は、きっといない。
きっとリアンだけだと思う。
私がリアンを好きになればいい話なのかもしれないけどさ。
…この道ともお別れか。
まぁ一生通らないわけじゃないけどさ。
「じゃあ父さんは切符買ってくるな。」
「うん。」
駅につき、改札前から電車がホームに入るところを上から眺めていた。
これには間に合わないか。
「舞桜!」
………え?