君の瞳に映りたくて。
「はぁ…はぁ…よかった、間に合った…」
「……春翔…なんで?」
「なんでじゃねーよ!なんで言わねーんだよ!
俺、お前の彼氏じゃん!
榑林と祥也に話して、俺だけなんにも知らなかったのかよ!」
「…ごめんね。
春翔のそういう顔、見たくなかったの。」
かっこいい顔が台無しだよ、そんな歪ませてたらさ。
春翔はいつも笑っててほしかったから。
「……アメリカ、行くのかよ」
「うん。」
「なんで…だって強化合宿は!?」
「断った。」
「なんでだよ…だって夢は…
あの日言ってた夢はどうなったんだよ!」
「そんな怒んないでよ。
夢だってさ、これで終わるわけじゃないじゃん。
私、走ることをやめる訳じゃないんだから。」
「アメリカにいて、日本の選手になれんの?」
「そりゃもちろん。」
「日本の大会で実績がなくて、日本にいないやつに声がかかんのかよ。
声がかかったら、日本に戻ってくんのかよ。」
「………うん。」
「だったら今だって行くなよ!残れよ!」
春翔は怒ったまま、私の手を掴んだ。
その手はいつもみたいに優しくて、暖かくて………
「………ハルちゃん?」
そんな時、後ろからお母さんの声が聞こえてきた。
「ハルちゃんでしょう?
大きくなったわねぇ…。」
「…おばさん、お久しぶりです。
今俺、舞桜と付き合ってます。」
「ちょ、春翔!」
「俺、どうしても納得できないんです。
今舞桜は、日本代表選手になるチャンスを掴んでるんです。
舞桜の夢なんです。
アメリカでは差別を受け、辛い思いをしてきた舞桜は平等な舞台で大嫌いなアメリカに勝つのが夢なんです。
スポーツはいつだって平等な世界なんです。
舞桜を、強化合宿に参加させてあげてください。
お願いします、舞桜の夢を掴むチャンスなんです。
お願いします!」
「春翔…」
春翔は、駅だというのに必死にお母さんに頭を下げてくれた。
私の夢を必死に一緒に追いかけてくれてた。
「悪いけど、舞桜にはアメリカでやらなければならないことがあるんだ。」
「…お父さん」