君の瞳に映りたくて。


「ただいま」


「おかえりなさい」


出迎えてくれたのはいつもの杉山さん。
俺はこの人以外家政婦を見たことがないから、きっとこの人一人で舞桜の面倒を見てるんだと思う。


「お邪魔します。」


「こちらをどうぞ」


ただの客人なのに、俺みたいなのでも杉山さんは丁寧にスリッパを出してくれる。


「ありがとうございます。」


「お父さんは?いる?」


「リビングにいらっしゃいますよ。奥さまも。」


「そっか。ありがと。」


そういって舞桜は俺の手を握ったまま、リビングへと歩いていった。


「ただいま」


「舞桜、おかえり~!
アップルパイ焼いたの!一緒に…あら、ハルちゃん!」


「こんにちは」


「いらっしゃーい!
舞桜が男の子連れてくるなんて、10年以上ぶりかしらー」


いや、それガキの頃じゃん。
しかもそれ、絶対相手俺だろ。

つーか、いまだにハルちゃんって呼んでんのもおばさんだけだよ。


「春翔くん、こんにちは」


「…お邪魔します。」


やっぱり、舞桜の父さんは昔からかっこいいけど、いまも変わらずかっこいい。


「ねぇ、アップルパイ焼いたの!
みんなで食べましょう!」


「とか言いながら、ほとんど杉山さんがやったんでしょ?
お母さんそういうの苦手じゃん。」


「こら、舞桜~!
そんなこと言ってると男の子にモテないわよ?」


「別にいいです。」


…俺にはモテモテだけどな。



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