君の瞳に映りたくて。
「お母さんの家は裕福な家庭で、お父さんの方はそうでもなくてね。
お母さんはお父さんとの交際をなかなか認めてもらえなかったみたいなの。おじいちゃんに。
お母さんの実家は代々、呉服屋でさ。
おじいちゃんは継いでほしかったみたいだけど、お父さんはおじいちゃんを説得して結婚したの。」
「え、でもその呉服屋はどうしたの?」
「お父さんは昔から起業することが夢だったみたいで、それが見事に当たってさ。
だから、おじいちゃんが亡くなってからは雇われ経営者みたいなのをお父さんが雇って、呉服屋は続いてるよ。
結局、呉服屋の方を子会社みたいにしてるの。」
「へぇ…」
「まぁ結論を言えば、お父さんの会社を継ぐ気がない人との交際をお父さんが認めたってことは、もし春翔と私がずっと付き合ってて、いつか結婚するとなったとしても、春翔は会社を継がなくて済む、って話。
リアンとの婚約もなかったことになるの。
まぁ春翔と別れたらまた全部元通りになっちゃうんだけどさ。
とりあえずは大丈夫ってこと。」
…なるほど。
でも俺らまだ高2なのにそんな先のことまで考えるか?普通……
金持ちっつーのは大変なんだな…。
「なにより、舞桜をお金で選ぶような人じゃなかったのが一番よ。
お金目当ての人が一番危ないから。
お母さんはハルちゃんがよかったから嬉しい!」
「はいはい、わかったから。」
「春翔くん、君の小さな頃の夢もちゃんと覚えているからね。」
「………はい。」
"僕がいつもまおちゃんのそばにいて、まおちゃんを守る!
いつも一緒にいるの!
だから、まおちゃんと結婚したい!"
そんな風に、おじさんに言ったな。
そのあと、損得考えずに誰かを守れること男になれ、って言われて…
あの頃はその意味が全然わからなかったけど、今ならちゃんとわかる。
俺は、いつも舞桜のそばにいて、舞桜を守るって決めていたんだ。昔から。
「よし、じゃあ俺は今日泊まってこうかな。」
「舞桜と同じ部屋はダメだからな!」
「えー、おじさん頭かたいよー」
大事な話が終わったところで、おじさんの顔が昔の顔に戻ったから、俺も昔に戻ってみた。
おじさんはその緩さに、なにも言ってこなかった。
昔はすごく仲がよかったから。
またあの頃みたいに、一緒に遊べるようになりたい。
「ところで、おじさんたちはいつまでここにいんの?」
「今日の21時の飛行機で戻るよ。」
「へー、そっかそっか。」
「だから隠れて同じ部屋で寝ようなんて考えるんじゃないぞ!」
「おじさんはそういうことなかったの?おばさんと。」
「俺のことはいいんだよ!」
「あ、あるんじゃん。
ずるいよー、自分ばっかり。」
そんなやりとりを、舞桜は笑ってみてた。