君の瞳に映りたくて。
「舞桜…」
「……わざとじゃないんでしょ?今の会話聞いてたの。」
「…たまたま、転けた拍子で…」
「そっか。
じゃあ話も聞かずに叩いたりしてごめんね。」
「いや…俺もごめん。
なんかいろいろ…」
「もういいから。
だからもういいじゃん。
誰が撮ったとかさ。」
「……それもそうだな。」
「…相川さん、早く部活行きなよ。
じゃーね。」
私は自分のロッカーからカバンをとり、春翔に手を握られ、握り返し、私たちは教室から出ようとした。
「……なんで、いつもあんたばっか…」
「………え?」
私?だよね?
「なんで宮下さんなんですか!?
私の方が絶対かわいいのに!
宮下さんなんて普通過ぎるのに!どうして!」
「……相川さんって、春翔のことが…」
「好きです!悪いですか!?」
「いや、別に悪くはないけど…」
「私、中学の時に100メートルで全国行ったんです。
なのに高校入ってから先生は宮下さんばっかり……
和泉先輩を見たとき一目惚れして、だけど先輩はその時違う人と付き合ってて、でも美男美女でお似合いだったから仕方ないと思った。
なのに次に付き合った人が宮下さんなんて…
はっきりいって、和泉先輩と全然釣り合ってないです!
強化合宿だって、なんであなたなんですか!?
絶対私の方が才能あるのに!!」
相川さんの悲痛の叫びは、私の胸へ突き刺さった。
どれもこれも本当のことだったから……
「舞桜は、努力で勝ち取ったんだよ。」
「……え?」
「誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残って、いつも、誰よりも長く走ってた。
休みの日も、1日も休むことなく毎日走ってた。
そうやって実力をあげて、狭き門を開けたんじゃないかな。
仕方ないよ、それは。
俺も毎日朝早く来て練習してるから、入学してから舞桜の努力は見てきたよ。
だけど、君は朝練来たことないでしょ。
自分には才能があるからって、自分に甘くなってたんじゃない?
努力しない人に花は咲かない。
君の才能も、努力しなければ開くことはない。
俺は、そんな努力する舞桜が好きなんだよ。
いつだって自分に厳しい舞桜が、俺は好き。
だから、結局努力した舞桜がすべてを勝ち取るんだよ。」
「春翔…」
「俺はちゃんと知ってる。
舞桜がここまで来るのに、どれだけ努力したかを。
だから、不安になんかなるなよ。」
「…うん、ありがと。」
「よし、部活行くか。」