君の瞳に映りたくて。
「……そうか。」
「私、諦めたくない。」
「……なにを?」
「強化合宿を。
今回受けなくても、もしかしたらまた声がかかるかもしれない。
またチャンスが回ってくるかもしれない。
だけど、もう二度とそんなチャンスが回ってこないかもしれない。
これが最初で最後のチャンスかもしれない。
そうだったら私、絶対悔やむと思うの。
後悔だけはしたくない。
たとえそのあとの選考で落とされたとしても、今諦めるのとは違うの。
だから……お願い。
私は日本へ帰りたい。
北高で、日本の勉強をしたい。
日本で走っていたい。あそこで。
お願い。
もう将生と向き合ったよ。
もう、戻ってもいいでしょ?」
「……春翔くんの影響か?」
「…そうだね。
春翔はいつだって前しか見てない。
諦めることを知らないの。
負けてられないって思うようになった。」
「リアンはどうするんだ?」
「リアンにはもう言ったよ。
私はリアンを好きになることはないって。」
「絶対か?」
「うん、絶対。
だって私は今、春翔が好きだから。
一緒にいて、自分にとってあんなにプラスになれる人、なかなかいないもん。」
「……そうか。」
「ごめんね、お父さん。
だけど私は自分の道は自分で決めたい。
お父さんに決められるのはもう嫌なの。」
「……わかったよ。
その代わり…」
「その代わり?」
「春翔くんをちゃんと俺に会わせるんだぞ」
「はは、もう別れたけど。」
「好きならもう一度ぶつかってこいよ。
だけど、俺の気持ちが揺さぶるくらい、相手が本気じゃなかったらちゃんと会社は継いでもらうからな。
春翔くんだけじゃなくて、誰が相手でもそうだけど」
「……それは変わらないんだね。」
「せっかく作った会社だからな。
俺の夢がつまってるんだよ。
だけど、俺を説得できるようなやつなら、俺も押し付け足りはしない。
約束する。」
「……ありがと」
「なら、また日本へ変える準備をしないとだな。」
「…いいの?」
「もともと、将生とちゃんと向き合ったら帰っていい約束だったしな。
後悔のないように、しっかり励めよ。」
「…ありがとう。」
「その代わり、冬休みの間はこっちにいろよ?」
「うん!ありがとお父さん!」