君の瞳に映りたくて。
それからどうでもいい連絡事項だけあり、先生は教室から出ていった。
「舞桜、大丈夫?」
「え?全然大丈夫だよ?
わたしには美乃里がいるもん。」
「……当たり前じゃない。
それと、関口と競り合って3000m、無茶しないように。」
「美乃里さん、私を誰だと思ってます?
いつも通りやったって、そこらへんの男子より速いです、私。」
「……そうね。
じゃあ言い方変える。
和泉と競り合って無茶しないように。」
「う……でも春翔にも勝ちたい!」
「それは譲れないなー、舞桜。」
「……昔は私の方が速かったし。」
「今は俺のが速いけどな。」
「とにかく、ただの練習なんだから、いつも通り走りなさい?無茶して今後に響いたら困るから。」
「はーい、気を付けます!
早く走りたいなー。
もう今日はなんかいろいろあったから…走って気分転換したい。」
「6時間目だからまだまだよ。」
くっそー、なんで体育そんなあとなんだよー。
「ところでさー、舞桜のその財布なに?
いつものどうしたの?」
「あー、ファスナー壊れちゃって、アメリカで修理だしたの。
終わったらお母さんに送ってもらう予定。
で、それまでの繋ぎで私が子供の頃使ってたこれ。」
「新しいの買えばいいのに。」
「やだ。
あれはお父さんが高校の入学祝に買ってくれたやつだもん。
いいものは長く使えるからって。
だからいいの。」
「へー、えらいじゃん。」
「普通です。」
でも、春翔も美乃里も祥也も、変わらずこうやって話してくれる。
やっぱり私は見る目があるのかなぁ。
お金なんて関係なく付き合ってくれる人が、3人もいるんだもんね。