君の瞳に映りたくて。
「宮下~!ちょい来て!」
1本走ったところで、部室前に座る先生が私を呼んだ。
「なにー?」
「これ、合宿で必要なものとか、スケジュール。
1月31日からだから、30日は部活は休んで学校終わったらすぐに向かえよ。」
愛媛か……けっこう遠いけど、まぁ飛行機ならすぐかな。
「私一人で向かうの?」
「そうだよ。
でも飛行機で行くなら空港まで、新幹線で行くなら駅まで、高速バスで行くならバスターミナルまで車で迎え来てくれるみたいだから、時間がわかったら俺に連絡しろよ?」
「へー、親切だね。
じゃあ飛行機予約できたら教えるね。」
「ちなみにコーチはジャマイカ人だから。
俺がガキの頃、すげー有名な選手だったんだよ。
もらえたらサインもらってきて。」
「……はぁ?」
なにいってんの、この人は。
遊びに行く訳じゃないんだけどな。」
「ま、五十嵐はかなり有利だよな。」
「なんで?」
「英語が出来るから。
ジャマイカの公用語は英語だ。
実際世界的に活躍してる人も参加するからその人たちは恐らく英語は出来るだろうけど、
他の学生やまだ世界に行ったことない人は英語ができてもペラペラには話せないだろうから。
通訳なしで話せるお前の方が絶対有利だよ。」
「へー、そうなんだ。」
スポーツだけできてもダメなんだなぁ。
語学力って大事だなぁ……
……そう思えば、私がアメリカにすんでいたのも、決して無駄ではないのかな…
「メンバーも超豪華だし、埋もれねーように頑張れよ。」
……って、本当にすごいな…
さすがにメダリストとかはいないけど……有名選手たくさんいるし…
でも、こういうメンバーの中でもやっていかなきゃ、代表選手には選ばれない。
「ま、今日のベストも11.5だし、宮下なら大丈夫だと思うけどな。
あ、それと交通費は学校側で負担するんだと。
だから領収書は忘れずにもらってこいよ。」
「へー、ずいぶん太っ腹だね。」
「今回は宮下だったからよかったけど、もし金ない家のやつだったら参加したくてもできねーだろ?
交通費とか、合宿費とか。
宮下だから出さないとかは言えないからな。
っていうか宮下んちからは寄付金ももらってるらしいから尚更。」
「ちょー私立な考え。」
どうせ、北山学長の考えなんだろうけど。
「ま、とりあえず飛行機の時間だけは早めに頼むわ。
必要なものも早めに揃えておけよ。」
「はいはーい。」