君の瞳に映りたくて。



私たちが出発する前に杉山さんが帰し、私たちも家を出た。


「こっち。」


「え、そっち?反対じゃん。」


「いいからいいから。」


……どこなんだろう。
浴衣着てそっち歩いてるの、私だけだよ。

まぁ待ち合わせかなんかに見えるんだろうけど。


「はい、ここ登るよ。」


「……ここ!?」


それはうちからも、和泉んちからもすぐ近くにある慰霊碑の立っている丘に上がる、長い長い階段。

ここには上に小さな公園があるから子供の頃たまにいったけど、それはそれは険しい道のりで……

誰も近寄らないところ。


「ゆ、浴衣じゃ無理……」


「と、思って別の道も用意してあるんだよ~。」


「別の道?」


そんなのあるの?ここに。
それならみんなそっち使うんじゃないの?


「こーこ。」


「え。」


け、獣道……
……だけどまぁ確かにコレなら……と、いうか階段で登るより遥かに近い。


「行こ。」



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