君の瞳に映りたくて。


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「よいしょっと。」


和泉が教えてくれた道からだと浴衣でもすぐに丘の上へこれた。


「なんでこんな楽なの?」


「だってここ、頂上じゃないから。
頂上はあっち。ここはまだ中腹なんだよ。
それでも、ここに続く道ってないんだよ。さっきのところからしかね。
だからここは誰も来ないんだよ。」


「へぇー。
ここのことは覚えてたんだね。」


「さっき思い出したんだよ。
俺ガキの頃友達とよく来たなーって。幼稚園の頃だけど。
そいつとの秘密の場所で、他のやつは連れてきたこと無いんだけどな。」


「え、そんなとこ私来ていいの?」


「いいよ。どうせ向こうも覚えてないだろうから。」


「幼馴染み的な?」


「いや、小学校は別だったからそれ以来会ってないかな。
だからいいよ。」


「ふーん……そっか。」


こんなとこ、私がいいのかなぁ…ほんと。
……あれ?


「ここ、みんな桜の木だ!」


「あ、そうだよ。
春になったらきれいなんだろうな。」


「……じゃあ春になったら来たらまた違う景色が見えるね。」


きれいなんだろうなぁ。




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