君の瞳に映りたくて。

和泉said



***


……なんっかモヤモヤする。
このモヤモヤは一体なんなんだ。

この丘の上に来てからモヤモヤが増すばかりで……あー、すっきりしねー。


「……和泉?」


「………え?なに?」


「なんか顔怖いけど…」


「……なんでもないけど、顔見てたの?」


「え!え、いや、たまたま見えて…」


「はは、冗談冗談。
そんなに焦んなくても良いのに。」


それに、最近舞桜が可愛く見えて仕方ない。
顔のレベルで言えば本当に普通だと思ってたのにな。

特別可愛い訳じゃない。
特別スタイルが言い訳じゃない。
家事もできない。

……だけど、性格は抜群にいいと思う。
人のことはまず悪く言わない。

走ってる時の顔も、フォームもタイムも抜群にいい。

すげー努力家だしな。

俺がいても着飾らない、常に素でいるところが他の女と違う気がする。
………違う女…って、俺誰と舞桜を比べてんだ?


…それに、仕草とか話し方とか笑い方とか、やっぱりいつも素の舞桜で…可愛く見える。
それは今に始まったことじゃなくて…初めて会ったと思ってるあの時から。


………え?あれ、待てよ?
俺、あの時の記憶あるじゃん。
いや、でも舞桜と再会したときは舞桜のことわからなかったよな?

………やっぱ、俺の記憶は少しずつ戻ってきてるんだな。
きっと、そのうちすべてを思い出して、俺は舞桜から離れる日がくる。


なんでだろうな。
今はこのまま、生身の人間じゃない俺でいたい。



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