青い夏
「この絵はあなたが描いてるの?」




声も、青い。



僕は、俗にコミュ障と呼ばれるものを盛大に発症しながら答える。



「うん」


彼女のまっすぐな視線から顔を背ける。

人と目を合わせるのは苦手だ。



彼女は、絵の方に向き直った。


それが分かると、僕は彼女に視線を戻す。

胸につけているリボンの色が赤色だから、僕と同じ3年生だ。



「夕日だよね」


「うん」



彼女はまた黙ってじっくり僕の絵を見始めた。

彼女の意識の中から、すーっとゆっくり僕の存在が排除されていくのが分かる。


沈黙が流れる。



僕から何か声をかけるべきなのだろうか。

そもそも、どうして彼女はそんな穴が開くくらい僕の絵を見つめるのだろうか。



僕が、本当に沈黙が居たたまれなくなったとき、彼女がゆっくりと目を閉じた。

そして、何かを噛み締めるように数秒間そのままでいて、ゆっくりと目を開いた。



「悔しい」


「え?」


「すごい、とか、綺麗、とかいう言葉しか思いつかない自分が悔しい。この絵をそんな簡単な言葉で表現するのは、この絵に申し訳なさすぎる」


「……ありがとう」



どうやら、すごく褒められているらしい。
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