青い夏
絵上手だね、本物みたいだね、そう褒められることは昔から多かった。

物心ついたときから褒められていた。


美術の成績はいつだって学年でいちばんだったし、コンクールに出せばいつも何かしらの賞には引っかかっていた。



だから、客観的に自分は絵が上手いことを知っていた。





でも、こうやって色づかいを具体的に褒めてくれた人は、初めてだった。



特に気を遣った部分ではない。

ただ見えている色をそのまま描いただけなのだ。





そして、僕は気付く。


彼女は、自分の個性を全く出さずにただ景色を模写する僕に怒っているのではないかと。



有名な画家の絵は、少し全体が赤みがかっていたり、黄色が少し明るかったりなど、それぞれ個性を持っているのだ。



僕の絵にはそれが全くない。



それにしても、さっきは褒めてくれていたようなのに、いきなり僕の絵の欠点を説教するなんて、感情の移り変わりが激しい人だ。




でも少しだけムッとする。


ただ趣味で描いていたものだし、わざわざ説教することもないじゃないか。


有名な画家の絵は、彼らの個性で本物と色が少し違っていても、素敵だし、僕には到底こんな絵は描けないと尊敬している。


でも、僕はこの世界のありのままをこの絵に収めたいんだ。
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