この夏の贈りもの
「チョコレートってどれ?」


お菓子売り場の前まで来て、翔が首を傾げてそう言った。


チョコレートは翔の目の前にズラリと並んでいる。


あたしは「これだよ」と、小声で言って商品を指さした。


「え、こんなに種類が豊富なのか!?」


翔は目を丸くしてチョコレートを見つめている。


「あまり食べたことがないの?」


「あぁ。チョコレートなんて高級品じゃん」


「そうかなぁ?」


高いチョコレートは何万円もするけれど、コンビニに置いてあるチョコレートは高くても300円くらいだ。


「なぁ、本当に奢ってもらっていいのか?」


「なによ今更。遠慮しないでよ」


「でも、買ってもらっても俺は本当には食べられないし……」


そう言い、俯く翔。


「そんな事最初からわかってるって。ちゃんとあたしが美味しく食べるから大丈夫だよ」


少し嫌味っぽくそう言うと、翔は一瞬頬を膨らませ、そしてまた熱心にチョコレートを選び始めた。
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