この夏の贈りもの
何度か父や祖父について仕事を行った事はあるけれど、1人で除霊に向かったことはまだなかった。


高校を卒業してから改めて本格的な修行が始まる予定なのだ。


「いいえ、俺はチホさんに来てほしいんです!!」


住田唯人が真剣な表情でそう言った。


「どうしてそんなにあたしにこだわるんですか?」


父や祖父の仕事について行っているからあたしの名前を知っている人がいてもおかしくはない。


だけど、こうして直に仕事を持ちかけられたことは今まで一度もなかった。


それは半端な能力を持っている霊媒師に依頼しても、霊を怒らせる結果になるからだ。


自体を悪化させて霊を悪霊化させれば、更に除霊は難航する。


「あなたのことが好きだからです!」


なんの躊躇もなくそう言いきった住田唯人にあたしは今度こそ激しくむせこんでしまったのだった。
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