この夏の贈りもの
☆☆☆

校舎へ戻ると廊下の蛍光灯が点滅しているのが見えた。


小さな虫が消えかけの光に群がっている。


誰もいなかったから、空気も少しよどんでいるようだ。


一旦宿直室に戻ったあたしだけれど、天井に蜘蛛の巣が張っているのを見つけてすぐに飛び出して来た。


布団を両手に抱えてみんなのいる教室に向かう。


「どうした?」


そう言って目を見開く唯人に説明をして、今日は教室で眠る事を伝えた。


みんなはどうやって眠っているのかと思っていれば、みんな床の上にそのまま寝転んでいた。


背中が冷たくて気持ちがいいのだと言う。


和は学ランを布団のように体にかけていた。


その様子に呆れて、あたしはシーツを外して和に渡した。


幽霊だから関係ないけれど、こんな所でそのまま眠っていれば体中が痛くなってしまいそうだ。


「おやすみ、チホ」


唯人のそんな声が聞こえてきて、あたしは目を閉じたのだった。
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