この夏の贈りもの
剥がれはじめる
2階建ての校舎を探検するには半日あれば十分だった。
ドッシリとした木造校舎、木の香りに、森から漂ってくる緑林の香り。
自然の香りで溢れていることに気が付いた。
「花子さんもいないし、笑うモナリザもいないね」
「いるわけないだろ」
「幽霊は存在するよ」
「そんなのはわかってる」
そんな言い合いをしながら広い階段を上がっていると、不意に足を滑らせた。
危うく下まで落下しそうになった体を、どうにかその場で保つことができた。
「おい、危ないだろ!」
和が慌てて手を伸ばしてきた、その時だった。
「なに、してんだ」
そんな声が頭上から聞こえてきて、あたしたちは顔を上げた。
階段の一番上に唯人が立っている。
その表情は険しい。
「え……?」
「早く来いよ、マヤ」
険しい表情のまま、唯人はあたしへ向けてそう言ったのだ。
「なに、言ってるの?」
一瞬聞き間違いかと思った。
あたしの名前はチホだ。
唯人もちゃんとチホと呼んでくれていた。
マヤって、誰?
そんな言葉が喉の奥で出かかっている。
ドッシリとした木造校舎、木の香りに、森から漂ってくる緑林の香り。
自然の香りで溢れていることに気が付いた。
「花子さんもいないし、笑うモナリザもいないね」
「いるわけないだろ」
「幽霊は存在するよ」
「そんなのはわかってる」
そんな言い合いをしながら広い階段を上がっていると、不意に足を滑らせた。
危うく下まで落下しそうになった体を、どうにかその場で保つことができた。
「おい、危ないだろ!」
和が慌てて手を伸ばしてきた、その時だった。
「なに、してんだ」
そんな声が頭上から聞こえてきて、あたしたちは顔を上げた。
階段の一番上に唯人が立っている。
その表情は険しい。
「え……?」
「早く来いよ、マヤ」
険しい表情のまま、唯人はあたしへ向けてそう言ったのだ。
「なに、言ってるの?」
一瞬聞き間違いかと思った。
あたしの名前はチホだ。
唯人もちゃんとチホと呼んでくれていた。
マヤって、誰?
そんな言葉が喉の奥で出かかっている。