この夏の贈りもの
だけど、そんな質問をする権利なんてあたしにはなかった。


あたしは唯人の恋人じゃない。


ちょっと名前を間違われたくらいで怒ってはいけない。


そう思い、言葉を押し込めて唯人を見つめた。


唯人は自分が名前を呼び間違えたことに気が付いていないのか、険しい表情のままこちらを見下ろしている。


「……チホ、行こう」


そう言ったのは和だった。


「うん……」


あたしはようやくその場から立ち上がり、階段を上りはじめたのだった。
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