この夏の贈りもの
「裕が悪霊化していってる……」


「は? 裕が悪霊? そんなことあるはずないだろ」


あたしもそう思っていた。


翔と一緒に遊んでいる裕を見ていたから、こんな風になるなんて考えてもいなかった。


「悪霊って、なんでそんなものになるんだ?」


「この世の未練が解消されず、そのままになっているからだよ」


「それなら、早くどうにかしてやれよ!」


和が急かす。


そんなのわかってる。


わかってるけど……あたしは霊媒師の見習いだ。


今回の仕事だって、ちょっと手助けをするだけで成仏してくれそうだから引き受けただけだった。


悪霊を成仏させるなんて、やった経験がなかった。


「と、とにかく、道具を持ってくるから」


あたしは早口にそう言い、教室を飛び出した。


このまま学校を出て逃げ出したい。


そんな気持ちに駆られる。
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