この夏の贈りもの
裕はこの悪霊の存在を知っていたのだろう。


裕の中に情が生まれ、引き寄せられるように自分まで悪霊化を初めてしまったのかもしれない。


さすがに、今のあたしに２人の悪霊を相手にすることなんて無謀なことだった。


お父さんやじぃちゃんなら、この学校へ足を踏み入れた時に気が付いていただろう。


「どうするんだよ」


そう言われて、あたしは数珠を握り直した。


「とにかく、こっちの悪霊を成仏させてからじゃないと、裕の除霊は始められない」


そう言いながら、あたしは窓から外を見つめた。


あっと言う間に日が暮れ始めていて、オレンジ色に染まったグラウンドが見えた。


それを確認し、あたしは大きく息を吐き出した。


悪霊は夜になると活動的になり、パワーを増す。


今から悪霊と対峙することになると、圧倒的に不利だ。


「鍵を開けるのか？」


和に聞かれてあたしは一瞬返事に困ってしまった。
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