この夏の贈りもの
事態は深刻だ。


だけどあたしの力で夜の悪霊には勝てない。


「チホ?」


和があたしの顔を覗き込んでそう声をかけて来た。


その近い距離に心臓が跳ねて、思わず後ずさりをしていた。


「どうしたんだよ?」


「な、なんでもない」


あたしは強く左右に首を振った。


和を正面から見ることができず、咳払いをする。


「夜になると悪霊は力を増すの。今のあたしが勝てる相手じゃなくなってしまう」


「じゃぁ、明日の朝を待つのか?」


「その方が確実に除霊ができると思う。事態は深刻だけど、陽が暮れてからの除霊は避けた方がいい」


「そっか。わかった、明日にしよう」


和の言葉にあたしはホッと胸をなで下ろしたのだった。
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