この夏の贈りもの
南京錠は複雑な鍵じゃない。


もしかしたら素人のピッキングでも開くかもしれないが……。


そう思いながらもあたしは引きだしの中に手を突っ込んだ。


奥の方に何かがあるかもしれない。


しかし手にふれるのは埃ばかりだ。


難波先生は鍵を持ち歩いていたのかな……。


そう思い、手を引き抜こうとした時だった。


手の甲になにか冷たいものが当たる感触があった。


机の上部にテープか何かを使って張り付けられていたものが、触れた瞬間手の中に落ちて来た。


ヒヤリとして冷たい感覚。


あたしはそれをしっかり握りしめ、手を引き抜いた。


手のひらを開くと、そこには小さな鍵があった。


「あった!」


これであの教室の鍵は開く。


裕の心残りが晴らされる時が来たんだ……。
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