この夏の贈りもの
そんな場所に自分から行くわけがない。


「あ~あ、時間の無駄だった」


あたしはわざと大きな声でそう言うと、残りのアイスを一気に食べた。


こめかみがキーンと痛くなり、眉間にシワを寄せる。


だけどその痛みは今はなんだか心地よかった。


嫌な事を全部忘れる事ができる。


そんな気がした。


その時だった、家の電話が鳴りはじめてあたしはビクッと身を震わせた。


最近ではケータイ電話ばかりで連絡をとっているから、家の電話が鳴る事は滅多にない。


リビングの入り口の置かれている電話の前に立ち、あたしはディスプレイに出ている番号を確認した。


「お父さんからだ」


そう呟き、すぐに受話器を取る。


「もしもし?」


「あぁ、チホか? 今日お父さんとおじいちゃんは帰れそうにないんだ」


そう言う後ろからおじいちゃんがお経を読む声が聞こえてきている。


「そうなんだ? 大変なの?」


「あぁ。思ったよりも霊の数が多くて、苦戦してる」
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