この夏の贈りもの
女性はあたしの声に反応するように顔を上げる。
その顔は真っ黒なモヤでおおわれていて、あたしは一瞬息を飲んだ。
数珠を近づけてみても顔周辺のモヤは消えない。
「チホ、顔はススの汚れだ」
裕にそう言われてあたしは「ススの汚れ?」と、聞き返した。
「あぁ。ホナミさんは戦争で亡くなった。その顔は火傷と、ススで黒くなっているんだ」
淡々と話す裕にあたしは目を見開いた。
ホナミさんという人は80年も70年も霊として彷徨っていたと言う事だ。
「裕……」
ホナミさんが裕に気がつき、声を出した。
その声は低く、本来のホナミさんの声ではないとすぐにわかった。
悪霊化が進むと、生前持っていたものがすべて変化してくるのだ。
「ホナミさん。おまたせしました」
裕がそう言い、ホナミさんの前に座った。
その瞬間、周囲のモヤがスッと消えて行き、肌寒さが一気に遠のいていく。
「どういうこと……?」
悪霊の除霊はまだしていない。
裕とホナミさんを引き合わせただけだ。
それなのに、悪霊の力が弱まっている。
その顔は真っ黒なモヤでおおわれていて、あたしは一瞬息を飲んだ。
数珠を近づけてみても顔周辺のモヤは消えない。
「チホ、顔はススの汚れだ」
裕にそう言われてあたしは「ススの汚れ?」と、聞き返した。
「あぁ。ホナミさんは戦争で亡くなった。その顔は火傷と、ススで黒くなっているんだ」
淡々と話す裕にあたしは目を見開いた。
ホナミさんという人は80年も70年も霊として彷徨っていたと言う事だ。
「裕……」
ホナミさんが裕に気がつき、声を出した。
その声は低く、本来のホナミさんの声ではないとすぐにわかった。
悪霊化が進むと、生前持っていたものがすべて変化してくるのだ。
「ホナミさん。おまたせしました」
裕がそう言い、ホナミさんの前に座った。
その瞬間、周囲のモヤがスッと消えて行き、肌寒さが一気に遠のいていく。
「どういうこと……?」
悪霊の除霊はまだしていない。
裕とホナミさんを引き合わせただけだ。
それなのに、悪霊の力が弱まっている。