この夏の贈りもの
それは戦時中だったからだ。


世界が真っ赤な炎に包まれ、1日を生きる事が精いっぱいで、幸せをかみしめる暇なんてどこにもない。


必死で生きて来た彼らだからこそできる活動だったんだ。


夜の祭りを楽しむにつれて、あたしとマヤの体が徐々に分裂していく。


あれほどまで強く同調し、あたしの意思なんて無視してこの町までやってきたのに、あたしの役目がなくなればすぐに離れていくんだ。


そんなマヤに少しだけ頬を膨らませるあたし。


だけど、行かなきゃいけないもんね。


「チホ、ありがとうねぇ」


懐かしい声が自分の喉から漏れた。


「いいよ、ひいばぁちゃん。それにしてもまだ成仏してなかったの?」


呆れてそう言うと、あたしの中からマヤがスルリを抜け出して来た。


その姿は古ぼけた写真で見たことがある、あたしのひいばぁちゃんの若いころにそっくりだった。


そんなひいばぁちゃんは87歳になった去年息を引き取っていた。


「いやぁ、一度はしたんだけどね。上から見てたら唯人がまだこの世界に残っていて、あたしとの約束を果たせず成仏できていないってわかったから、戻って来たんだよ」
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