この夏の贈りもの
夏休みが終われば、現実に引き戻されるだけだった。


「俺はチホからいろんなものを奪ったんだな」


長い髪に触れて和はそう言った。


「ショートカットの髪をなびかせながら元気一杯に走るチホを奪った」


そう言われて、あたしは目を見開いた。


いつの頃の事を言っているんだろう?


「和っていつからあたしのことを……?」


そう聞くと、和はまた頬を赤くして頭をかいた。


「小学校の頃から……」


聞いた瞬間、あたしは目を見開いていた。


「小学校の頃……?」


「あぁ。放課後、オレンジ色に染まるグラウンドで遊んでいるチホを見つけた」


「そんなの……だって、和は学校が違ったよね?」


「あぁ。あの時は偶然道の前を通りかかったんだ。フェンス越しに見るチホがすごく可愛くて、それからずっとチホを見てた」


「嘘でしょ……?」


また、あたしを喜ばせておいて突き落とすつもりなんだ。


和があたしをそんな昔から知っていたなんて……。
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