この夏の贈りもの
未来へ
2人で校舎へ戻って来ると、ほとんどの電気が消えていた。


最後の唯人が成仏し、霊たちが作っていた校舎のイメージがなくなってしまったからだった。


あたしは和が用意してくれていた懐中電灯を使って教室まで来ていた。


隅っこの方にホコリや蜘蛛の巣はあるけれど、あたしたちがいた教室だけは綺麗に掃除されている。


「これってさ、もしかして……」


「俺が掃除してチホが来るのを待ってた」


和がそう言い「やっぱり」と、呟いた。


和は予めここへ来て、あたしが寝泊まりできるように準備をしてくれていたのだ。


いくらイメージで綺麗な教室を保っていても、本来は数十年前に廃校になったホコリまみれの教室だ。


グラウンドにも草が沢山生えていて、寝転んで星を見上げる事は困難そうだった。


「水道や電気を復活させるのは大変だったんだぞ? 町の人に納得してもらえるように、何度も嘘をついたんだ」


「そうだったんだ」


和が一生懸命奮闘している姿を想像すると、少しだけおかしかった。


それからあたしたちは和が買ってくれていたケーキをたべて、最後の夜を過ごしたのだった。
< 213 / 218 >

この作品をシェア

pagetop